夏の温泉で時は止まった

月山の夏スキーに裏切られ、意気消沈のまま、この日の宿へと車を走らせた。



いっそのこと、月山スキー場の更に西に位置する湯殿山温泉まで足を延ばしてみようかとも思ったのだが、リフト近辺の残雪がほとんど無い状態では、サプライズは期待できそうもないので、さっさとこの日の宿の露天へと気持ちが向かったのだった。



夏の夕方、4時過ぎには宿に到着。チェックインのあと、早速露天に入る。温泉は 今年の八甲田春スキー 以来のことだから、およそ3ヶ月振り。夏の残照に射られて入る露天は強酸性で、白く濁った湯ノ花が身体に滲みるように浸透し骨まで溶かすかと思うほどの刺激良さだ。



ほんの3分も入っているだけで、じっくりと汗ばんでくる。湯船から身体を出し、石造りの縁に腰掛け、足だけを湯の中で泳がせる。沢を流れるせせらぎの音が夏の風と伴に肌をなで、汗を気持ち良いものへと変えてくれる。そして、露天に持ち込んだ缶ビールをグイッ! とひと飲みすると、時は止まった。




2時間も露天に入っていただろうか、さすがに身体もふやけ、飲むべき缶ビールも空になり、意識のリハビリも終了したところで露天を上がり、夕食へと向かう。

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今夜はごちそうだ。まずは食前酒の紫蘇酒を頂き、瓶ビールと冷酒とワインを注文する。3種混合となるが、今日は許してやるとするか、あとは喰って寝るだけだからな。



この宿で出てくる酒はなかなかに美味しい。そのなかでも、辯天酒造の加良志酒はキリッとした辛口で、爽快な飲み味。肴が無くともこれだけで十分味わえるのであるが、この酒、なかなか手に入らない一品である。市井の酒屋やネットなどでは手に入れることが困難なことから、毎年、この宿を訪れるときの楽しみとしている酒なのである。



その加良志酒を空け、ビールはとうに空になり、蔵王スターの赤を飲む頃、肴もほぼ食べ尽くし、最後の腕物となった。そしてそれは珍しく、塩鯨汁であった。コリコリとした厚手のベーコン風鯨。塩味が滲みた軽い歯触りの沢庵のようでもあり格別に味わい深い。

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そういえば、今年は鯨づいているなと思った。ここ何年も、いや何十年も鯨など食べたことがなかったのに、今年は 春先のスーパーでの鯨刺し、そして 夏の回転寿司での鯨握り と、意外なチャンスがあったではないか。そして今夜の塩鯨汁、それなりに工夫が凝らされた鯨料理はこれが日本人の伝統なのだと思い、四方を海に囲まれた民族の誇るべき食文化なのだと、酔った頭はブレーキが壊れた車のように暴走し始めたのであった。





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  • 蔵王山頂からのダウンヒル

    Excerpt: 翌日、宿を後にして蔵王山頂にあるお釜を目指した。朝方、山の天候を確認したところ、うっすらと雲が掛かっていたが崩れる心配は無さそうである。 Weblog: さよならの八甲田 racked: 2008-08-13 20:23
  • 秋くじら

    Excerpt: 鯨づいている今年、例の弱小スーパーに秋の鯨が入荷した。赤提灯の親父が言うことには、調査捕鯨ものが時々、競りに掛けられるという。競りの単位はかなり大きなブロックなので、赤提灯風情の小さな飲み屋ではとても.. Weblog: さよならの八甲田 racked: 2008-10-16 19:00