ヤマセの吹くとき

北海道沖の爆弾低気圧、この時期としては風が台風並みに凄かった。4月1日の未明から終日、いや、翌日まで強風が吹き荒れた。



朝、風が西の窓にぶつかり飛行機の轟音のような音を響かせる。その音に目が覚めると、今度は車のセキュリティ装置が風の勢いに誤動作し警鐘を鳴らす。このところ、経験したことがないほどの嵐だ。



その中を早朝ランニングに出ると、怪しい黒い雲が空を大急ぎで過ぎり、パラパラと季節はずれの雹を降らす。強い西風に思い出すのは子供の頃のこと。



真冬のお正月、おじいさんの田舎に遊びに行くと、そこは雪に埋もれた別世界。外はびゅーびゅーと強風に荒れ狂う猛吹雪。
目の見えないおじいさんは音の気配に敏感で、家の中で囲炉裏の側に座りながらヒューヒューと吹き荒れる風の音を聞き、ほっ! ほっう~!  ヤマセじゃのぅ~、 と言い、寒そうに囲炉裏の熾き火に手をかざす。厳冬の日、山から西風が吹き下ろすとそれは嵐のような猛吹雪となり、三日三晩荒れ狂う。



ヤマセとはどのような文字を書くのかいま持って分からないが、きっと「山勢」とでも書くのだろうか?
山の勢いが強いとき、それは天候が荒れるとき。強い西風と大雪が三日三晩続く始まりの時であった。



そして、ヤマセが止んだ日、真っ白な雪野原の燎原から冬の太陽が弱々しく昇り出す。蒼白い太陽が輝くとき、それは一面の銀世界をホワイトダイヤモンドのように輝かせる至福の瞬間である。子供のころ、その情景は天国であった。厳冬の中、新雪に飛び込むように外へと掛け出したのである。



引っ越ししてから、ヤマセのような風が吹くとき、ふと、おじいさんの世界に一歩近づいたような気がした。

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  • 2玉ラーメン

    Excerpt: ヤマセが止んだ翌日、子供の頃の記憶と同じくお天気は快晴で始まった。朝のうちは風の強さが残っていたものの昼頃からはそれも治まり、車で近くのスーパーへ買い出しに出かける。 Weblog: さよならの八甲田 racked: 2008-04-02 21:32
  • 魔界の金曜日  3日3晩降り続く大雪

    Excerpt: 前回からの続き: 【最初から読む】 【最初のあらすじを読む】 【2回目のあらすじを読む】 12月26日から降り始めた雪は、3日3晩降り続く大雪となった。樺太沖合に停滞した爆弾低気圧が寒冷な大陸.. Weblog: さよならの八甲田 racked: 2008-12-29 20:08