鬼界の羅生門に死す

酒に合うメインディッシュシリーズの3回目。
(前回は サーモンと日本酒は語る でした)
今夜の酒は、例により頂き物の和歌山は田端酒造限定品の大吟醸「羅生門」。
89年モンドセレクション酒類部門グランプリ受賞作品とのこと。


それにしても、よしもとボード君、いくら八甲田仲間とは云え、こんなに良い酒をいつもいつもお手数掛けてかたじけない。ありがたく頂戴致しまする。



さて、この酒、一見甘口で軽く感じるが実は腰が強く、肴を選ぶ酒である。いや、もしかしたら肴など必要なく、一人でじっくり夜通し付き合える酒かも知れない。


湧き水のようにさらりとし、甘く上品な味の酒には、オリーブのようにアクが強くいつまでも後味の残る食材とは相性が合わないものである。
そこで、肴はあっさり系の純和風にしてみた。



材料は、珍しく手に入ったニュージーランド産キングサーモンの切り身と北海道産秋鮭の筋子、それに塩らっきょう。


筋子は粒を丁寧にほぐしてから小鉢に入れ、ニンニクみじん切り少々と、たまり醤油をタップリ掛けて、一晩冷蔵庫で寝かす。決して筋子にオマケでくっついてくる正体不明の醤油を使っちゃイカンよ!
一昼夜明けると、筋子の一粒一粒がたまり醤油をタップリ吸い込み、紅くはち切れんばかりの自家製極上イクラの出来上がり。


軽く塩を振ったキングサーモンは炭火焼きとはいかないので、ガスコンロのグリルでうっすらと焼く。


お皿に焼き上がったサーモンと自家製イクラを盛り付け、それにあっさりとした塩らっきょうを添えると出来上がり。キングサーモンと秋鮭のイクラでは親子とは言えないが遠い親戚くらいには当たるだろう。
名付けて「アンクルサーモンとカビア盛り合わせ」。

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秋の夜長、日本酒を飲むと思い出すことがある。それは、田舎の酒好きお叔父さんのことだ。


法事で久しぶりに親戚一同が寄り集まったとき、それぞれが自慢の酒を持ち込んだのである。
私は新潟産の「上善水如」を持参したのだが、やや甘口で清流のようにさらりとした味は日本酒の中でも好みの一つであったが、それを一口飲んだ叔父曰く、 おなご酒だじゃ! こういう酒は飲めん、と言って自分の持ってきた地酒をグビグビと呑みだした。


それは岩木正宗という辛口の本来は燗を付けて呑む酒であったが、一升瓶を豪快に飲み明かす叔父と酒談義に花が咲いた。


甘口の酒は腰が弱く飲み厭きがする上、後味が好くないと言うのが、叔父の口癖であった。




その叔父も既に他界した。酒を飲み過ぎた所為か腰が立たなくなる難病に罹り、入院してから暫く経って意識不明のまま逝ってしまった。


もしも、叔父に「羅生門」を呑ませたらなんと言うだろう?
確かに甘口ではあるが、しっかりとしたその腰と確かな飲み心地、呑むほどに深さを増すその切れ味は決して辛口の岩木正宗に劣らない。

おなご酒だじゃ! と言うのか、それとも酒鬼の叔父らしく、ニッ! と笑いひたすら呑み干すのか。



平安の頃、京に鬼がいてその鬼は夜ごと下人たちと酒を酌み交わし、いつしか羅生門で死に絶えた。
後の世、誰からともなく、鬼の呑んだその酒を鬼界の羅生門と云うと言い伝えられた。

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