魔界の金曜日  混血のメスキータ その2

前回からの続き
このような大聖堂やモスクに入ったとき必ず行う行為がある。それは残念ながら礼拝ではないのであるが、何故なら私はクリスチャンやイスラミストではないから神に祈りを捧げてから神聖な館内を見学するという敬虔な気持ちを持ち合わせていない。



では、一体それは何かというと、アーチ状に丸く突き上げた天井に施された彫刻や壁画を写真に撮ることなのである。西洋建築の技と美がそこに結集されている。私はそういう意味では、天井フェチかも知れない。日本の扁平なマンションに住んでいると決してあり得ない住環境の荘厳さを一時の慰みとして味わうのだ。



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均整の取れた10分割の丸天井とそれを取り囲む天窓たち、そして壁面の装飾。窓からの陽光が天井と壁面を淡いパステルカラーに染める、光を計算し尽くした匠の技。この天井はイスラム建築なのだろうか、それともカトリック建築なのだろうか、私には分からない。



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こちらの天井は更に凄みがある。梁の形状から明らかにイスラム建築と分かるが、それ以上に天井に施された色濃い色彩に絶句する。それは最初、ポルトガルのアズレージョのような色彩タイルを張りつめたものと思っていたが、実はそうではなく、壁面を構成する原石を巧みに色分けしながら組み合わせたものだった。これほど手間がかかり、これほど根性が要り、そして息を呑むほど美しいイスラム建築は見たことがない。



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少女はみなこのように天井を見上げその圧倒する威容さに呆然とする。この写真に写っているアーチ状に積み上げられた石組みが先ほどの天井にも施されているのだろう。一つ一つの石には彫刻も彫られている。



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こちらはカトリックの本殿。厳かの一言に尽きる。



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そして、その本殿の天井はこのように豪華絢爛な蒲鉾型で天使の彫刻が黄金色に施されているのである。



イスラムとカトリックとの壮大な饗宴、そして妖しい融合。歴史のうねりの中で幾度となく衝突してきた宗教戦争の果てに、夥しい血が流れ多くの殉教者が黄泉の世界へ誘われた。そしていま、覇権を争ったメスキータは混血の遺産としてそこにある。



時代を越えて流れる血が微かな争いの匂いを感じさせたのか、歴史の瞑腑が闇からその正体を現さぬうちに、我々はコルドバを後にし、今宵の宿グラナダへと向かったのだった。


次回へ続く









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