黄砂の道  なまはげ太鼓のきらめき

前回からの続き
今夜の宿はネットで探した一番安い宿である。男鹿温泉郷は初めていくところなので全く事情が分からないし、さりとて思いついて急に出た旅なので事前に十分調べる時間もなかった。



高速道の錦秋湖PAで休憩したときは正午を過ぎたころだったので、現地に遅く着き日も暮れた中をあちこち宿を探すことはリスクがあると思われた。若い頃なら、そのようなリスクも厭わず現地到着して実際の宿を見てから決めたものだったが、そのような決め方をしても宿の食事の準備が間に合わないことがほとんどで、あまり良い記憶がなかった。



電話をすると宿の親父らしい男性が出たので、今夜一泊したいのだがと尋ねたところ、部屋は空いているという。しかし、値段がネットで調べた価格より3割方高く言われたので、素泊まりでも良いのだがといったところ、もっと安い部屋もあるというではないか。そして、漸くネット価格に落ち着いたところで、そのまま予約を入れることにした。



宿に着き部屋に案内されると、窓から男鹿半島沖合の日本海がうっすらと霞の中に浮かんで見える。今日は夏の名残か気温湿度とも高いようで、鮮やかな日本海の群青色と夕暮れ時の太陽が沈む茜色の対比を期待した向きには残念な景色となった。それ以上に残念なことは、窓から見える景色の中に他の高層ホテルが景観を遮るように目に入ってくることである。この宿と海岸線との間には防風林のベルト地帯があるのだが、さらにその間に他のホテルも建っていて、それが窓からの景観を邪魔しているのであった。



なるほど、ネットで一番安い宿の秘密がこれかと納得し、今日は多くは期待しないから構わないがと、そうそうに源泉掛け流しの温泉に入りに行った。お湯の質は滑らかで大変に気持ちの良い温泉だったが、なにせ湯温が高く、八甲田のように のんびりと1時間も2時間も入っているわけにいかなかった。冬はよっぽど寒くなるのだろうか、夏でも湯の温度が高く湯船に持ち込んだ缶ビールも早々に空け、真っ赤になりながら部屋に戻ったのだった。



夕食はおきまりの定食のような献立だったので、せめて酒くらいはとなまはげ地ビールの小瓶を2本と日本酒の地酒、ワインを注文した。さすがに酒と米の産地だけあり、日本酒もビールもワインまでも美味い。今日の 黄砂の道を通った時の恐怖 を忘れさせてくれるには十分なアルコールとなった



食後、近くの公民館でなまはげ太鼓の演奏があるので見にいってはと宿の女将から言われたので、なまはげなんて年末年始のNHKニュースでしか見たことがなかったものだから、つい興味が湧き出かけてみることにした。



宿の目の前に公民館があり、演奏が始まる時間には既に黒山の観光客でごった返していた。鬼の面を着けたなまはげ達が舞台に上がり勇壮に太鼓を叩いて踊り始める。その太鼓の音が、まるで能登半島の御陣乗太鼓を彷彿とさせる音色で、なまはげの面もそういえば御陣乗太鼓の面と似ていなくもないなと思い、日本海の沿岸地帯は同じような祭りが伝わっているのかも知れないと思ったのである。

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なまはげ太鼓は時間と伴にヒートアップし、その圧倒的な太鼓の音量と怪しげななまはげ踊りが異様な興奮を巻き起こし、酔った観光客の荒い手拍手とアンコールの叫びに延々と1時間以上も熱演を続けたのだった。聞けば地元の若者達による地域興しのボランティア活動だという。昼は働き夜このように観光客になまはげを知ってもらうために日夜演奏会を開いているという。殊勝な若者達の息吹がなまはげに命を与えたのか、まるでそれは、天井桟敷の劇的空間 のように日本海の突端に煌めいたのだった。



次回へ続く








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  • 夏の傷を癒す温泉ドライブ その8

    Excerpt: 前回からの続き: 宿から歩いてほんの数分のところに公民館らしきものがあり、そこで夜ごと、なまはげ太鼓が演奏されている。 Weblog: さよならの八甲田 racked: 2010-10-26 18:33