星の記憶

こちらに引越しする際に こんなのが出来ますと言われた 例のアウトレットモール、その建物もほとんど出来上がり、10月中旬の営業開始に向けて最後の仕上げと準備に大勢の人たちが没頭しているところである。



先日、いつもの赤提灯に 飲みに出かけたところ、そのアウトレットモールの話題で一杯だった。この飲み屋の親父は町内会のとりまとめ役をやっているらしく、モール開店に伴い周辺道路が渋滞することに対して地元自治会として区に対策申し入れしたとかしないとか、ひどく興奮した話しぶりだった。それにも増して、いままで静かだった住宅街がモール目当ての観光客で溢れかえることになるので、治安対策やら騒音対策やらで大忙しとのことだった。



とにかく、ご苦労さんとしか言いようがないのだが、観光客が増えると、親父の赤提灯に間違って入る客もいるだろうから、商売繁盛で良いんじゃないの? と言ってやったら、ニヤリと笑ったのだった。



そして、ほおを緩めた親父は嬉しそうに呟いた。地下鉄の駅からモノレールが延びてくるかも知れないと。それを聞いて私は以前住んでいたところとのあまりの相似性に驚いたのだった。




昨年まで30年近くも住んでいた 横浜の家の近くにも、やはりベイサイドモールというアウトレットがあり、シーサイドラインというモノレールが走っていた。およそ30年前にその場所に引越した当初は、回りは埋め立て地だったので公団住宅以外なにもなく、目の前は延々と拡がるだだっ広い平地、そしてその先は東京湾だった。海から引いた運河が川のように家の前を流れ、船着き場を兼ねる公園へと続いていたのである。



それから10年ほど経って街が整備され人も増えるにつれ、公共交通機関としてJR根岸線の新杉田から京急の八景島へ抜けるシーサイドラインが敷設された。そして、更に街が発展すると、シーサイドライン沿線にベイサイドマリーナとベイサイドモール、そして八景島遊園地が建設されたのである。おかげで、土日ともなると生活道路は観光客の車で埋め尽くされて大渋滞となり、街はモール目当てや八景島目当ての若者達カップルで溢れるようになったのだった。



入居当初は海岸まで足を延ばせば、柴港という漁港があり漁村が集落をなしていた。それがシーサイドラインや八景島やベイサイドモールが出来るや、環境が一変し、一大観光地と化してしまったのである。そのような変化は好むものではなかったが、一方的に嫌なわけでもなかった。それなりに地域が発展することになれば悪いことではないと思っていたのである。




いま、こちらへ引越し静かな環境を満喫しているとき、アウトレットモールが営業を始めることになると、きっと、喧噪と雑踏と渋滞に満ち溢れるようになるに違いない。ある意味、おぞましい出来事が目の前に迫っているわけだが、それ以上に、不思議な輪廻の巡り合わせというべきか、逆らいがたい運命の悪戯というべきか、住むところのあまりにも相似な環境に唯々驚くばかりである。



横浜時代の数十年間、アウトレットモールとモノレールのある環境で過ごしてきた。そして、ここ、引越してきた先には、これから同じようにアウトレットモールとモノレールが出来あがる。けっしてそれを望んで来たわけではないのに、むしろ静寂な環境の故に引越を決断したのに、あとを追いかけるようにモールが出来あがりモノレールが敷設される。この驚くべき環境の相似性!



逆らいがたい輪廻の二重性を感じながら赤提灯を出て家へ帰るとき、片側3車線の幹線道路沿いに歩道が続き、その歩道からさらに小高い丘陵地帯へかけて、夜のイルミネーションがまるで天の川のように白く輝いていた。街を彩るそのLEDの電飾は、夜空に続く星の階段のように私の記憶を誘い、前世の記憶を呼び覚ますどころか現世の記憶を二重写しにしてみせるのだった。

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いま、このような相似な環境ができつつあるとき、一つの人生の中で二度同じ生活を送ることの意味を推し量ることは出来ない。天の川の星々が煌めくように地に降りそそぎ私の記憶のなかに紛れ込むとき、それは酔いとともに混沌とした輝きを放つのだった。









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