雨の日はオリーブが跳ばない

このところ、雨の日が続いている。夏なのにまるで 何時ぞやのビエンナを訪れたとき のような気候だ。晴れた日は気温が高く湿度は低いという誠に過ごしやすい地中海性気候となるのだが、雨が降り出すとそれは冷たい雨となり、何日も降り続く。



ビエンナやザルツブルクの時のように大規模な洪水にならなければよいがと心配するのだが、幸いにも近くに大きな川は存在しないので、それは不要な杞憂なのだが。



さて、この家に引っ越してから一つだけ困ったことがあった。それは、キッチンがオープンカウンターとなっていることなのである。オープンカウンターそのものは料理しながらテレビを見たり、家族が居れば会話しながらとかできるので、まことによろしいものなのだが、ガスコンロで揚げ物やらを調理すると、たちどころに油跳ねでまわりが汚れてしまう。



それは当初から分かっていたので、マンション業者もオプションで油跳ね防止用の遮蔽版を用意してはいたのだが、せっかくのオープンキッチンには相応しくなく思えたし、なにより美しくなかったので、何も付けず素のままにしておいた。天井からぶら下がる巨大なレンジフードがすべてを吸い尽くしてくれるだろうと期待していたのである。



しかし、入居当初、最初にまずやってしまった。オリーブでニンニクを炒めようと熱したフライパンに材料を入れた途端、オリーブが勢いよく跳ね飛び、キッチン側の勝手口に付けた新品のロールカーテンを油まみれにしてしまったのである。



以来、炒め物厳禁、ついでに焼き魚厳禁、と非常に厳しい戒律の下、暮らしているのだが、いつまでもピューリタンのようには暮らせるはずがない。



いつか、戒律を破る日が来るのだ。だが、まてよ、天井からぶら下がる巨大なレンジフードは一体全体、役に立っているのかいないのか、はなはだ疑問な存在なのだ。



料理中のあらゆる熱気や飛び油や蒸気や、そういうもの全てを吸入し外に排気してくれるものと思っていたのだが、現実は全く違っていたのだった。



そもそも、最近のマンションなど機密性が高い建物の中から空気をスムーズに換気しようとすると、相当なパワーの排気タービンが必要になる。流体力学をやっておられれば簡単なことなのだが、空気を移動させるためには圧力差がなければいけないのである。つまり、

  部屋の内の圧力 > 外の圧力

この圧力差を得るためにレンジフードのタービンを回し空気の流路を作るのだが、昔の隙間だらけのボロ家だったらそれで良かった。空気を吸いとった部屋は負圧となるが、隙間からどんどん新しい空気が侵入し、部屋の中と外を常に同じ圧力に保つことにより、レンジフードが換気装置として機能できていた。



しかし、気密性が高いと、レンジフードのタービンを回すことにより部屋の圧力は次第に負圧となり、そのうち、タービンが空回りするようになると、一切の換気が出来なくなるのである。



事実、炊飯器から立ち上る湯気が実証してくれる。レンジフードの下で炊飯器の湯気は最初こそ、綺麗に吸いとられるのだが、次第にそれが弱いものになり、やがてレンジフードから外れたあらぬ方へと飛んでいき天井の壁紙に付着する。その時、窓を開け放ち外気を導入するや、たちどころに湯気はレンジフードに再び吸い込まれるようになるのである。



マンションなどを設計製造する建築屋さんは工学の基礎として流体力学は習っているのだろうが、機密性の高い建物におけるレンジフードでの換気という点では、欠陥製品を作っていることになる。こういう基本的な住まいに関する性能については、行政がもっと木目細かく指導しないといけないのではないだろうか、いつまでも業者寄りの行政政策を続けるのではなく、生活者としての目線が必要と思われる。消費者はやかましいのだ!



さて、このところの雨と、次第に身体がオリーブを欲していることから、遂に戒律を破り、炒めものを作ってみることにした。雨が降り湿度の高い日であれば、跳ね油も湿気に吸収され幾分かは和らぐだろうと思ったのである。



お手本は、先日の朝日新聞に載っていた 豚肉の葡萄ソース。記事によると夏の薬膳の一種とのことで、葡萄の酸味が夏の身体に効くらしい。取りあえず、記事通り作ってみて、そこそこの味だったので、ちょっとイタリアン風にアレンジしてみた。

画像



葡萄の代わりにトマトを使い、豚肉のトマトソースとしてみた。果たして薬膳となるのかどうかは分からないが、味はいかにもイタリアはシチリア風となり、美味しいワインが欲しくなるところだが、そこは 地元の生酒 渓流朝しぼり で合わせ、ご覧のような和洋折衷となった次第である。



トマトの酸味と豚肉がよく合い、それに対する生酒も味を丸めるには適しているのだが、生酒の米臭さがイタリアンを食する際の深酒を避ける効果があり、この点では薬膳なみの効き目となったに違いない。








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