西の山に鳴く雉

明け方の4時頃、小鳥のさえずりならぬ鶏の鳴き声がけたたましく響き渡った。それはしかし、コケコッコー! とは鳴かず、グィーーギィー、グィーーギィーとおよそ汚らしい野太い声で鳴き響く。マンションの防音性能の良い窓サッシをしてもそれを貫通するように響き渡ってきたのである。



その鳴き声に、夢見心地のまどろみの中から意識が目覚め、はてこの近くに鶏を飼っている人がいるのだろうかと不思議の念に捕らわれたが、やがて再び、心地よい眠りの世界に陥っていったのだった。



朝7時過ぎ、漸く目覚め、早速ランニングへと出かけるが、今朝のあの鳴き声はいったい何だったのだろうと走りながらも頭の中は疑問符だらけで一杯だった。



いつもの休憩ポイントは小高い丘陵の上に位置し、はるか西の山を見渡せる見晴らしの良い場所である。このところ、道路を挟んだ空き地は 例のアウトレットモール を建築する真っ最中だった。その工事現場を見ながら、ランニング後の呼吸を整えるために軽くストレッチやラジオ体操をこなし深呼吸を行う。そのとき、再び、その鳴き声がグィーーギィー、グィーーギィーと響き渡った。それも、かなり間近で。



後ろを振り向くと、盛り土のある一段小高い丘の上に、それは居た。まるで黒い鶏のような格好をした大きな鳥が西の山をジッと見つめるように。



老眼と乱視の入り混じった私の目には細部を子細に観察することは出来なかったが、およそ鶏以上はあろうかという堂々とした大きさ。しかも、正面から見える身体はカラスのように真っ黒だ。もしかしたらチャボかも知れないと思い、側面を見ようと移動したとき、それはくるりと横を向いたのだった。そしてその大きさに驚くこととなった。およそ、60~70cmはあろうかという堂々とした体躯と長い尾。

画像



そして、その側面のグレー色と首筋から胴体に掛けて走る鮮やかな朱い羽根。その格好や周辺の住宅環境からこれは住民が飼っている鶏などではなく、山雉なのだと思った。雉を見るのは初めてのことで、雉がどのような姿形をしているかなど知るよしもなかったのだが、間違いなくこれは雉なのだと直感した。



その雉が何故、こんなところに。ここは ホテル もあれば住宅もあり、道幅の広い幹線道路も走っている。なのに何故?



理由は直ぐに分かった。工事中のアウトレットモール、その土地は以前だだっ広い丘陵だったところ。木もあれば草もあり柔らかい表土で覆われたおよそ10町歩ほどの広さの遊休地であった。そこにいまアウトレットモールが建つ。



雉はその遊休地となっていた丘に住んでいたのだろう。しかし、工事が始まるやいなや逃げ出さざるを得なくなり、道路を挟んだ隣の丘陵へと渡って来たのだった。そして、毎朝、小高い丘の上で、もと住んでいた遊休地を眺めながら、いつしか異様な建物の建つ変わりように驚き、グィーーギィー、グィーーギィーと悲しく泣き叫ぶのであった。まるで、遙か遠く西の山を見やりながら、戻らぬ時空を愛おしむように。





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