パンダ娘たち

梅雨入りで朝から重い雲が垂れ込めている。
それでも、朝起きるといつものように地上におりてスローランニングを始める。
森に向かう途中、緑のおばさんに出会う。毎週月水金は必ず、学校に行く子供たちの横断歩行を黄色い旗を振って見守っている。緑のおばさんは元気よく「おはよう」というので私も走りながらつい「おはよう」と声を出して答える。


森の中を走りながら、いつもは心の中でおはようを言うパンダ娘たちのことを思い出した。
そもそも、何故その子たちがチャイニーズだと判ったのか?


森のランニングコースにその子たちが現れたのは、昨年の秋ころからだ。森の中の折り返し地点に近い坂を登って、その子たちは反対方向から二人、三人と腕組みしながら狭い道を塞ぐように歩いてきたのだ。朝から元気よく大声でおしゃべりしながら。

コースを塞がれて、チ! 邪魔だな! と思いつつ隘路をすれ違いざま、その子たちの言葉が日本語ではないことに気づく。遠方から初めて見たときから、顔立ちや衣服など何となく日本人の猫娘たちとは異なっていることを感じてはいたのだが。


はてさて、何語だろう? と、走りながら考えるが、冬ソナのチェ・ジュウが言う優しい音韻の韓国語とは明らかに響きが違う。それに韓国語の場合は、主語述語の並びが日本語と酷似しているうえに外来語など日本語と共通の発音があるので、それとなく推測がつくのであるが、彼女たちの言葉はまるで解らない。

では、中国語か? と考えるが、サントリー烏龍茶のコマーシャルに出てくる美人姉妹の発する愁いのある中国語の音韻とも異なる。この美人姉妹はまるで日本の京都弁を賽の目のように細かく刻んで再構成したようなおっとりとした響きを聞かせるのだ。

その娘たちの発する言葉は、酷く濁った発音で、まるで怒鳴り合っているようにも聞こえる。一言で中国といっても北京族もいれば上海族もいるし、サントリーコマーシャルの中国語とは異なるようだが、きっと山岳族や東北族出身なんだろうと勝手に決め込んで、彼女たちをパンダ娘と呼ぶことにした。



一冬が過ぎて、パンダ娘たちも相当慣れてきたのだろう。
ある桜の咲く春の日、私はいつもよりは早めに朝のランニングを始め、森の折り返し地点に到着した。そこで、入念に足の屈伸運動やアキレス腱の伸縮運動を行っているときに、パンダ娘たちはぞろぞろとやって来た。
そして、屈伸運動をしている私の背後を、なにやら一層大きな怒声とも嬌声ともつかぬ大声を発して通り過ぎたのである。屈託のない笑いと共に。
わたしは、おっさん、もっと走れ! とか、じじい、無理すると死ぬで! とか、まるで悪ガキにからかわれるホームレスのような羞恥心を背中で感じ、思わず振り返った。

朝の陽光が桜の花を白く染め上げ、春風が花びらを吹雪のように舞い散らせる。一瞬の時が停止し、そこはまるで中国長春の森にいるようにパンダ娘たちは大声を出して走り去った。


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